30代よりも下世代の公務員の方はご存知ないかもしれませんが、アラフォー以上の方であれば「夕張市事変」が記憶に残っている方も多いのではないでしょうか？
まず本題に入る前に、夕張市事変を知らない方のためにザックリとお話したいと思います。
夕張市というのは、夕張メロンでお馴染みの北海道夕張市のことです。
メロン、北海道と聞くとなんとなくイメージが湧くのではないでしょうか。
ただ、この市はマイナスの意味合いでお馴染みになってしまったものがあるのですが、それが「財政破綻」です。
先輩とかから、「夕張市ってお金が無くなって財政破綻したみたい」という話はチラッとでも聞いたことがあると思うのですが、
「市が財政破綻する」って言われても、どういう状況かいまいちピンと来ない人がほとんどだと思います。
あと、「夕張市ってメロンとか特産品もあるのに、なんで財政破綻なんてするの？」と思う人もいるでしょう。
私も無茶苦茶この件に関して詳しいわけじゃないので、概要だけパパッとお伝えします。
起死回生のパンチが当たっちゃった結果
夕張市って、今でこそ夕張メロンとか映画のイメージが強いと思いますが、元々は炭鉱の街だったんですね。
「掘ったら掘っただけ儲かるぞ～！掘れ掘れ～！」ってな具合で一気に盛り上がって、人口はピークで10万人を超えていました。
でも、それが未来永劫続くわけもなく、流れの変化が来てしまいます。
「石油」の登場です。
「石炭よりも石油の方が便利じゃん！」という流れが来てしまい、瞬く間に夕張市は衰退していきました。
衰退したものの、人口10万人以上の市民がいるわけで、この人たちの仕事（収入）をどうするか？という深刻な問題が発生します。
普通に考えて激ヤバな状態なわけなんですけども、ここで起死回生のパンチが当たっちゃうので夕張市はダウンせずに済んだのでした。
当時の市長さんが「炭鉱から観光へ」をキャッチコピーに、起死回生を狙って、炭鉱の跡地を利用したレジャー施設をそれはそれはもうたくさん作っちゃうんです。
なんかここまででもう「ヤバそうだな・・・」っていうニオイがプンプンするじゃないですか？
ところがどっこい、これがクリーンヒットするんです。
で、炭鉱の衰退とともに市も衰退していくのかと思いきや、再びバブルが夕張市に到来する。
こうして自分の手腕を過剰評価しちゃった市長さんがレジャー事業への投資にどんどん舵を切っちゃうわけですが、このタイミングでバブル崩壊が来て、観光業一本でやってきた夕張市は一気に不景気になってしまいます。
ここで他の自治体同様、景気が回復するまでジッと我慢すれば良かったのですが、イケイケドンドンの夕張市は「粉飾決算」みたいなことをすることに。
本当は赤字なのに「うちは儲かってますよ」みたいな感じで言っちゃって、銀行からお金を借りて、沈みゆく船のレジャー投資に使い込むけど当然回収なんて出来るわけもなく、それが2005年くらいにバレて財政破綻して今に至ります。
そこから夕張市は「財政再建団体」になって、「運営のイチイチは国の許可を貰わないといけない街」になっています。
ちなみに、１２万人近くいた人口は現在７０００人を割っていて、半分以上が高齢者で、税収が上がる見込みもなく、人口流出が止まっていない…という状況。
夕張市事変は決して他人事じゃない
夕張市が財政破綻したときに私はすでに公務員として働いていたわけですが、そりゃもう職場がザワつきましたよ。
「うちの市もヤバいから、無駄な時間外（残業）は止めるように！」と、けっこう厳しめに通達が来たし、なんなら給料を3〜5%くらい全職員が下げられたくらいだし。
今考えると私が働いていた自治体も夕張市と同じように「粉飾決算」みたいなことをしていたのだろうし、そんな自治体は世の中多かったんだと思います。
幸い、私の働いていた自治体は「財政再建団体」に落ちることなく何とか耐えたわけですが、この騒動って決して他人事じゃないんですよね。
今で言うと京都市が夕張市と似たような状況だし、私が知らないだけで第二、第三の夕張市は世の中にたくさん存在していると思います。
結果論として、レジャー事業を推し進めた当時の夕張市の市長が槍玉に上げられがちですが、じゃあ、あの状態から何か別に有効な打ち手があったのかと言われると・・・おそらく無かった気がします。
むしろ、起死回生のパンチが一度当たっただけ当時の市長さんは優秀なのかもしれない。
たまたま夕張市があんな形になってしまったけど、これって今の日本を象徴する形であることは間違いなくて、起死回生のモデルケースを生み出さない限り、明るい地方自治は待ってないような気がします。
まぁ、危機感を煽ったところでイチ公務員に何かできる話じゃないけど、過去の夕張市事変は頭の片隅にでも置いておいた方がいいんじゃないかなと思い、記事を書かせていただきました。
